Project2020親族調査親族調査親族調査2020報告書

■発刊に寄せて

にかほ市 白瀬南極探検隊記念館
館長 阿部 和久

令和2年度は、白瀬南極探検隊記念館が開館して30周年を迎えました。これもひとえに、展示・所蔵資料や様々な情報提供にご支援、ご協力を賜りました白瀬南極探検隊員御親族・関係者の皆様のおかげと感謝申し上げます。

さて、一世紀以上前の白瀬南極探検隊の功績に思いをはせる時、私は、彼らの人間的なスケールを考えずにはおれません。…この場合の「スケール」とは、彼らが心に持っていた「尺」或いは「ものさし」のことであります。

私ども、現代に生きる市民が日々ミリ単位のことにあくせくしている態度に比べ、特に白瀬矗は、比較にならないほど大きなスケールで物事を考え実行した人だったのではないかと推察されます。知識も情報も乏しい最果て・南極を目指し、人跡未踏の大和雪原(やまとゆきはら)に到達し無事に帰国、南極の領土獲得を企てつつ億単位の借財を完済し85年の生涯を全うする、こうした超弩(ど)級の人生を送ることが私たちにできるでしょうか。

それは、探検隊員についても同様です。今となっては、公式記録「南極記」をはじめ隊員個々の記録から察するより術はありません。白瀬南極探検隊は大きなスケールを持つ人間たちの奇跡的な結集と思わざるを得ません。こうした人間を生み育んだのは、国の形の未だ定まらぬ明治という時代環境のみならず、隊員個々の血に潜む才であり智でありスケールだったのでしょう。

当記念館としては、白瀬矗はもとより、110年前に大和雪原到達の偉業を成し遂げた「奇跡の結集」を果たした隊員個々に光を当てることが、即ち探検の意義の再評価につながるものと考えております。 このたび、NPO法人白瀬南極探検100周年記念会に委託して行われた「白瀬南極探検隊員親族調査」が、新型コロナ禍の制約の中、限られた時間のうちに報告書として上梓されたことに敬意を表しますとともに、調査にご協力いただいた探検隊並びに後援会等の親族・関係者の皆様に改めて深甚なる感謝を申し上げます。 今回の調査報告を足掛かりに、白瀬南極探検隊員たちの実像がさらに明確化され、社会の課題を解決するための大きなスケールが提示されることを期待しております。

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