日本南極地域観測隊
第51次W 二部 恒美
1950年代後半、日本は「国際地球観測年(IGY)」に参画し、その一環として南極観測に乗り出した。IGYについて64ヵ国が参画し、米国が提唱した南極条約に向け、南極地域の平和的利用、科学的調査の自由と国際協力、同地域における領土主権と請求権の凍結、核実験の禁止などが規定された。白瀨の戦前期の南極探検の実績があったとはいえ、主権回復間もない日本が南極観測に参画し、さらに南極条約の策定に加わったことは、日本の国際社会への復帰を強く象徴するものであった。 (*1
●観測のあゆみ
日本南極地域観測隊暦より抜粋した主な出来事(日本に関する事柄等) (*2
1910年11月28日
白瀨隊、開南丸(204トン)で東京芝浦を出航
1912年1月19日
白瀨隊、南極大陸に第一歩
1912年1月28日
白瀨隊80°05S、156°37W到達「大和雪原(やまとゆきはら)」と命名
1956年11月8日
第1次隊東京晴海埠頭を出航(観測船宗谷)海上保安庁
1957年1月29日
第1次隊西オングル島で国旗を掲げ周辺一帯を「昭和基地」と命名 2月15日越冬開始
1957年7月1日
国際地球観測(IGY)開始 (1958年12月31日まで)
1958年2月24日
第2次隊、悪天候に阻まれ越冬隊送り込み断念。15頭の樺太犬を昭和基地に残置し帰国の途に就く
1959年1月14日
第3次隊、タロ、ジロ生存確認
1959年12月1日
南極条約採択:原署名国(111ヵ国)
1960年8月4日
日本、南極条約批准(原署名国)
1960年10月10日
第4次隊福島紳隊員遭難
1960年11月14日
第4次隊新山脈へ到達
1961年2月1日
「やまと山脈」と命名
1961年6月23日
原署名国の日12ヵ国批准により南極条約発効
1961年11月10日
第5次隊南緯75度に到達
1961年
第6次観測隊 出発
1965年11月20日
ふじ 第7次観測で就航(海上自衛隊)
1965年12月24日
第7次隊により昭和基地再開
1967年12月14日
第8次隊プラトー基地(米)到着
1968年2月9日
西オングル島西端の露岩上で故福島紳隊員の遺体を発見
1968年7月20日
プラトー基地(米)−86.3℃記録
1968年9月28日
第9次隊極点旅行に出発
1968年12月19日
第9次越冬隊村山雅美ら11名南極点到達(史上9番目)
1969年2月15日
第9次隊南極点から昭和基地に帰着(5,180km走行)
1969年9月8日
昭和基地で最低海面気圧931.3hPaを記録
1970年2月10日
日本隊初のロケット(S-160)観測に成功(11次隊)
1970年7月21日
第11次隊、みずほ観測拠点開設
1977年1月21日
昭和基地で最高気温10.0℃を記録
1978年12月27日
南極点基地で−13.6℃の高温を記録
1982年4月7日
南極の海洋生物資源の保存に関する条約発効
1982年9月4日
昭和基地で最低気温−45.3℃を記録
1983年7月21日
ボストーク基地で世界最低気温−89.2℃を記録
1983年11月14日
初代 しらせ 第25次観測で就航(海上自衛隊)
1984年5月7日
昭和基地に雨が降る
1985年1月1日
あすか観測拠点開設
1985年12月15日
初代しらせオーストラリア観測船ネラ・ダン号救出
1990年3月3日
国際犬ぞり南極大陸横断隊横断達成
1991年11月4日
環境保護に関する南極条約議定書採択(マドリード)
1996年5月27日
昭和基地で最大瞬間風速61.2m/sを記録
1996年12月7日
ドームふじ観測拠点で氷床掘削2,503.5m達成(第37次隊)
1998年1月14日
環境保護に関する南極条約議定書発効
1998年12月18日
初代しらせ、プロペラ故障のオーロラ・オーストラリス号(豪)の救出に成功
1999年2月15日
大場満郎南極大陸単独徒歩横断達成
2006年1月23日
第Ⅱ期ドームふじ基地氷床掘削3,028.5m達成
2007年3月1日
国際極年(IGY)開始(2009年3月1日まで)
2009年11月10日
二代目しらせ 第51次観測隊で就航(海上自衛隊)
2010年1月30日
日本、南極条約に基づく査察を初めて実施マイトリ基地(インド)など6基地査察
2011年3月25日
昭和基地に建設された大型大気レーダー(PANSY)の観測開始
2016年3月12日
二代目しらせ、強風でモーソン基地で座礁したオーロラ・オーストラリア号(豪)に3月6日到着。総員66名、ヘリ3機を乗せて、ケーシー基地まで2,300kmを大輸送、無事完了させた
2018年1月6日
荻田泰永、無補給単独徒歩で南極点到達
2019年1月16日
阿部雅龍単独徒歩南極点到達
日本南極地域観測隊の観測活動は、昭和31年出発の1次隊から数え、現在(令和3年1月)第61次越冬隊と第62次越冬隊(令和2年11月出発)の2隊が越冬交代式(毎年2月1日)、を控え鋭意活動中のこととおもいます。
●参考資料
(1、 日本の南極への関与1910-1963 理想主義/現実主義的国際間の狭間で 友次晋作介 360頁 (2、 南極暦2020年


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